競争の戦略を読みこなせてナンボ、、、っていうけれど
この前さらっとご紹介した、「競争の戦略」ですが、じっくり解説したいと。そういう事でございます。
経営者にオススメのビジネス本5選
今回はプログラミング出てきません(笑)言わずとしれた名著ですが、はたして中小企業にも活用できるのか?そのへんの事を書いていきたいと思うしだいです。マイケル・E・ポーター渾身のデビュー作です。
これがね~前も書きましたが、、ぶっ厚いんですよ。読んでるこちらが試されているような錯覚を覚えるくらいです。「あれからまだ40ページぐらいしか読んでないよ?最後まで読めるの?というより理解してる?」と、著者のポーターから無言の圧力を受け続けるような本です(笑)この本を読むきっかけは、ワタミの創業者の方の、雑誌インタビューを見た事でした。「経営者たるもの、この本を読みこなしてナンボです。」だいたいこんな事を言ってたように思います。
そこで、早速アマゾンで購入。だいたい80ページくらい読んだところで、
「難しい!そしてフレームワークの使い方がわからん!」となり、明確に挫折しました。
中小企業経営者が忘れがちな「市場原理」は超大事
しかし、その2年後。経営者を続けていく中で、やはりこの本の80ページくらいにまでに書かれている事がフラッシュバックしてくるわけです。「そういえば、このパターン、どこがで見た事ある!
ポーターが言ってた事象だ!」と。そこで、もう一度アマゾンで購入。(あまりにもかさばるので、
最初に買った競争の戦略は捨ててやりました(笑))2年間の経験の蓄積のおかげでしょうか。今度は理解できるように。
この本に書かれているテーマは、まず自社の市場原理を理解する事です。
市場原理の力を理解し、どうすればいいかの定石を知る
ビジネス書って結構あれですよね?万能薬を提示しがちというか。社員教育さえやれば儲かる!とか、販売の仕組みさえ作れれば、黒字化できる!とか、そういうの多くないですか?自分もそういう要素(マーケティング、イノベーション、組織など)をしっかり考える事が経営者の仕事だと思ってました。しかし、その前段の、自分の商売がどういう市場で戦っているかをはっきりと理解する事の方が大切だという事が書かれています。
中小企業|競争の戦略の読みこなし方~まずは業界分析~
この本は前述したように、クソ分厚く、読み方にコツがあります。あらゆる業界に適用できる本であるため、全部のページが自社に関係するという事は、複数の事業をやっている会社でないと、ありえません。
最初から、全部読む事を放棄すべきです。まずは、54ページまでの、業界の構造分析を徹底的にやってみる事をオススメします。これだけでも、新しい視点が多く、かなりの時間を要します。
業界分析の後は、基本戦略の理解⇒競争業者分析
ページを順におっていくと、54ページまでの業界分析のあと、競争戦略の基本についての話になります。この時点で自社の戦略を見出す事ができればいいですが、そんなに簡単な話ではない会社
の方が多いと思います。ここはいったん頭に入れておくだけになります。その次に競争業者分析に入っていきます。ここですね~。最初に挫折したのは(笑)この分析のための情報を集めるのが、とにかく難しい!ライバル会社が何を考え、どうなっていくか?がこの章の分析テーマです。「ライバル会社の目標管理システムはどうなっているか?」「ライバル会社の責任者どうしの意見の不一致はあるか?」などの分析項目があり、「知るか~~~!!!」と何度か激昂した事があります。
この分析のための情報の集めにくさは、ポーターも承知のうえらしく、「この分析のための情報がすぐに揃う事はほとんどないだろう」と言っています。この丸投げ感、、、恐るべし。ただ、諦めずに、コツコツと収集していくことで、より強力な分析にしていく事ができます。
中小企業にとってのマーケット・シグナルという概念
この本ならではの概念として、マーケット・シグナルが
出てきます。簡単に言うと、企業のメッセージの事です。
企業がマスコミを通じて発表する事柄や、ホームページなど
で伝えてくるシグナルの事です。
これは、相手のシグナルもあれば、自社が発するシグナルも
あります。それによる業界の駆け引きについて、説明しています。
この章は、分析半分、実際の戦略半分というような内容に
なっています。シグナルを分析したり、効果的に使う事で自社に
有利な戦略を模索する事ができます。
「うちは、大手じゃないからメディアに取り上げられたりし
ないし、、、。」というあなた!今は自社ホームページや
SNSもありますし、お店自体や商品パッケージをメディアと
して活用する事もできます。
中小企業にとっての競争行動について
そろそろ飽きてきましたか?途中から僕の頭を
整理するためだけにこのブログを書いているような気すら
してきました(笑)
競争行動というタイトルの章になるのですが、これは、、、。
訳が違うのか、、、。いまいち書かれているタイトルと内容が
一致しないのですが、競争業者間での情報交流がテーマです。
「こういう情報が漏れるとこういう反撃にあうかもよ」とか、
「あえて、こういう情報を送る事で防御できるよ」などの
分析と対抗策が書かれています。
前章のマーケット・シグナルをより行動に落とし込んだ内容で
発展させた内容という感じですね。
買い手と供給業者に対する戦略
この章は、一番最初に行った業界分析を思い出して
もらえるとイメージしやすいかと。
業界分析は、新規参入の驚異、競争業者間の敵対関係、代替品の驚異、
買い手の交渉力、売り手の交渉力で構成されます。
市場にはこれらの力が働いており、それを分析する事で
適切な戦略の土台になります。
この章では、買い手と売り手の交渉力をコントロールするための
戦略について、書かれています。
買い手=ターゲットの力をコントロールできるか
買い手とは、自社商品を販売するためのターゲットの
事です。どんな事業であれ、お客様がいなければ商売は成立
しないのですが、ここでのテーマは、いかにお客様からの
値下げ圧力を回避できるか?または、値下げ圧力をかけてこない
お客様をどうやって探すのか?になります。
どんな企業でも値下げ競争合戦に巻き込まれると、重傷を負うため
多くの事業で、この視点は大事になるのではないでしょうか。
供給業者=仕入れ業者の力をコントロールできるか
ここでは、仕入れ業者の力をどうやってコントロールするか?
というテーマになります。自社にとって、その仕入れ業者から
仕入れる以外に選択肢が無い場合に仕入れ業者の交渉力は
強くなります。交渉力が強くなると、値上げの圧力がかかります。
原価を抑えたい会社側と仕入れ業者側との綱引きについての
手法を解説しています。
また、「うちは仕入れとかするような業界じゃないから関係ないかな~」
と思った方。資金を仕入れる銀行も仕入れ業者になるので、ご注意を。
業界内部分析
市場分析も佳境に入ってきましたね~
ここでは、市場の中身について、グループ化をとおして
分析していきます。ひとえに同じ市場といっても、色んな
規模の企業が存在します。スーパー事業を考えてみましょう。
沖縄県内に、100店舗以上を構えて運営している巨大スーパーの
グループ。15~20店舗の中堅スーパーグループ。
地元に一店舗だけある、地域密着の個人スーパー。
このようにグループが違うことによる、戦略に違いが出てきます。
また、違うグループに移行する場合、新たな参入障壁が生じるため
その関係について分析する事ができます。
業界の進展・変化
自分たちがやっている事業が、どんな段階の業界なのか?
よくある、ライフサイクル理論で考えるとこからスタートします。
よく見るやつですよね。これ。
このS字カーブを起点にして、分析を行っていくのがこの章です。
ただし、このライフサイクルをそのまま、当てはめるのではなく、
自社の業界に応じてカスタムして考えるという考え方になっています。
さらにここでは、業界がどのように変化していくのか、
将来の予測を行う事を目的にしています。
買い手セグメントの変化や買い手の学習、
製品イノベーション、マーケティングイノベーション
などの要因によってどう変化するのか?
変化を予測しておく事で、あらかじめ手を打っておく事が
できます。
中小企業がポーターを活かしきるために
とりあえず、競争の戦略の前半にあたる部分まで、
駆け足できてみました。駆け足のつもりでも、恐ろしい文字数に
なるところが、この本の恐ろしいところです。
この本のどのあたりでつまずくのか? 注意点を考察
まず、分厚さにやられるのは、もちろんそうなのですが、
頑張ってそれを乗り越えたとします。
次に最初の業界分析ですね。ここをなんとか頑張ってほしいです。
自社にあてはまらない項目や、よくよくわからない部分については、
空白にしておき、ガリガリパソコンに打っていきます。
基本的にエクセルに分析項目を入力⇒自分なりの答えを入力
わからない項目は、答えは入力せずに空白にしておく。
こうする事で、どこの分析が漏れているか、ひと目でわかります。
そのうち理解がすすみ、答えが出せる場合もあると思います。
一番厳しい部分が割と前半にくる
最大に厳しい部分が割と前半にくるのも挫折ポイントになります。
競争業者分析&マーケットシグナルの部分は正直かなりきついと思います。
ほとんどの分析項目に答えられない人の方が多いと思います。
ここは、ポーター自身も、「一発でこの分析を終われる事は
ありません」的な事を言っているので、思い切ってこの分析を
放棄する事もありだと思います。
これの答えを出すまで、分析しようと思うと、分析自体がいつまで
たっても終わらず、戦略を立案できないという事態もありえるからです。
必要最低限の業界分析・予測からスタートする
偉そうに書いてますが、僕もまだこの段階です。
しかし、定期的に見直し、精度を上げていきたいと思います。
経営者がまずこの本を使って目標とするラインは⇒
業界構造分析はしっかり行い、競争業者分析とマーケットシグナルを
適当なレベルで切り上げます。
その後の買い手と供給業者に対する戦略は、最初で行った業界構造分析
を強化する内容のため、しっかりと行います。
さらに、業界内部分析と業界の進展・変化も分析からの戦略立案を
助ける内容のため、ガッツリやります。
後半は自社にマッチする分析のみ行う
ここから、後半だと、、、?やってられるかい!
と思ってますよね?大丈夫です。
後半部分のテーマは、「業界タイプ別競争戦略」なので、
自社に関係するテーマだけ分析を行えばよい構成になっています。
後半部分の分析テーマ一覧
「多数乱戦業界の戦略」
「先端業界の競争戦略」
「成熟期へ移行する業界の競争戦略」
「衰退業界の競争戦略」
「グローバル業界の競争戦略」
「垂直統合の戦略的分析」
「キャパシティ拡大戦略」
「新事業への参入戦略」
4つの事業をどう分析したか
当社は現在、4つの事業を進行中です。
①米卸事業
②学生向けプログラミングスクール事業
③ホテル運営事業
④和スイーツ事業
この中で、最も歴史が長い米卸事業は、どうやって分析したか?
米卸業界と競争の戦略
前述した前半部分を全て行い、後半部分は
「成熟期へ移行する産業の戦略」のみを
行っています。後半はわずか30ページ程度!
分析終了です!どうですか?救いになりましたか?(笑)
冗談はさておき、この30ページについては、まるで
米卸業界だけの事を言っているかのような、既視感を覚え、
ページをめくるごとに、「そう!そうなんだよ!」と言いながら
読んでいたのを覚えています。
そのくらいポーターの書いている事は汎用的なのであります。
米卸業界を分析。業界ならではの落とし穴を理解する。
とりあえず箇条書きで業界の構造的な罠や圧力をご説明します。
①成長の止まっている業界なので、売上を増やそうとすると、シェア争いが激化する。
②業界全体の需要に比べて業界全体の供給能力の方が大きいため、設備の稼働率が落ちる。
③稼働率が落ちると、経営者は稼働率を上げるために、利益率を下げてでも他社から奪うという判断をする。
④買い手のスイッチングコストが低い。つまり、飲食店側は自由に他社に乗り換える事ができる。
⑤新製品や新用途がほとんど現れなくなる。
⑥成熟市場なので、顧客は商品を買いなれており、値段を引き下げる圧力がかかる。
まだまだあるのですが、ざっくりと業界の構造はこんな感じです。決して魅力的な業界ではありません。
理由は①~⑥までの要素によって、強力な値下げ圧力がかかるからです。値下げ圧力がかかる業界は、どこが勝ちという事でもなく、業界にいる企業全体が負け戦をしている事になります。戦略なしには何ともならない業界といえます。米卸業界の場合、特に③の要素がやばいです。「せっかく精米工場に新しい精米機導入したのに、あんまり稼働してないなぁ、、、。稼働しないくらいなら、少しの儲けでもいいや。値引き営業して、他社から売上を奪ってこよう」と経営者は考えがちです。確かに合理的に見える考えです。ただし、合理的に見えるという事はどの会社もそう思うという事。各社同じように考えたとしましょう。どこまでもどこまでも、価格は下がっていきます。それこそ利益が出ない水準まで。この値下げ圧力のために業界全体の平均利益が非常に低く抑えられています。しかし、その圧力を理解しつつ、きちんとした戦略を組む事ができればしっかりと利益を出す事は可能です。
プログラミングスクールの分析
当スクールの分析も同じです。前半部分は、お米卸事業と同じく
ガッツリ行いました。後半部分は、「先端業界の競争戦略」のみを行っています。
またまた箇条書きで書いていきますね。
当スクールの市場は、基本的に学生向けのプログラミングスクールとして定義しています。分析は以下の通りになります。
①参入障壁が低い。撤退障壁が低い。(始めるのもやめるのも簡単)
②買い手が十分な情報を持たない。
③スイッチングコストは多少ある。
④強力な代替品のある市場。予備校・塾・資格の学校・専門学校など。
⑤先端業界なので、固定的なやり方があまりなく差別化しやすい。
⑥段階的に成長していく事がわかっている市場
⑦先端市場なので、商品のベネフィットが伝わりやすいセグメントを見つけ、上手にアプローチできるかが勝負の分かれ道になる。
⑧先端市場なので、まだルールが無い。自社に有利なルールを作れた企業が当然有利になる。
こうした特徴を理解したうえでどんな戦略を打ち出すのか?
分析内容についての解説
米卸業界は携わって7年。プログラミングスクールはまだ一年半しか経営者のキャリアを積んでません。そのためプログラミングスクール市場の理解については、米卸業よりは理解が浅いかもしれません。しかし、主要な要素は抑えていると思います。まずは①について。プログラミングスクールは千差万別で、小学生向けに簡単なプログラミング(ブロックプログラミング等)を教えるだけのスクールであれば、割と簡単に始める事ができます。人材も見つけやすいですし。そういう意味では、始めやすい事業といえます。参入障壁が低いのです。また、米業界のように大規模な設備を使うわけでもありません。そのため、気軽に撤退する事ができます。撤退障壁も低いのです。参入障壁も撤退障壁も低い業界を、ポーターは「リスクも低く、リターンも低い面白味の無い業界だ」と言っています。ただ、業界分析は「この業界で普通にやってるとこうなる」という事を明らかにするものです。なので、普通に経営を行うと、確かにポーターのいうように、リスクもリターンも低い、面白味の無い業界だと自分でも思います。そこを理解したうえで、戦略を組んでいくのは経営者の腕の見せ所でもあります。
②、⑤、⑥の要素は、成熟市場には全く無い要素です。これは、値下げ圧力がかかりにくい業界である事を示唆しています。そのため、上手な差別化や買い手へのわかりやすく魅力的な提案によって利益が伸ばしやすい市場といえます。
ホテル事業の分析
当社はホテル建設を計画しています。その中で当然参入に
あたって、様々な分析を行っています。前半部分は、米卸、
プログラミングスクールと同じように行いました。
後半部分は、「多数乱戦業界の戦略」と「新事業への参入戦略」
を行いました。特に、この分析では売り手の戦略について、優れた
洞察を得られたので、これを戦略に反映させていく予定です。
和スイーツテイクアウト事業の分析
自分で書いていて、よくもまあ、無軌道に事業を計画するもんだなぁと(笑)
ただ、ちゃんとリスクを計算に入れながらのチャレンジです。ほんとですよ。
観光客の方向けに和スイーツのお店も計画を進行中です。
あと、半年以内にはオープンできるかと。もちろん分析にあたってはポーターの
力を借りておりますです。
前半部分⇒前3つの事業分析とまったく同じ。
後半部分⇒「多数乱戦業界の競争戦略」&「新事業への参入戦略」
あと、ここでは、これまで適当に流していた、「マーケットシグナル」を使った
面白い戦略を思いついたので、それも戦略に組み込んでいきます。
中小企業がポーターを活かすために~競争の戦略まとめ~
いかがでしたか?この文字数!このよくわかんなさ!
よくわかんないかどうかすらもよくわかんない!といった状態ではないでしょうか。
ただ、我慢しながら、なんとか読み続けてみてください。市場の構造
がわかると、色んなものが見えたり見えなかったりします(笑)。
とりあえずこの記事で書いたように、自社に関係しそうな箇所だけピックアップし、
マーケット・シグナルなどの、情報取得が激ムズな箇所は適当に流すのがコツです。
それでは、また。