結構前にニュースになっていて、気になっていたので
書きたいと思います。アルファ碁ってご存知ですか?
碁を打つコンピューターの事です。
自分の目を持ち、画像を認識して手を打てるので、人間との
対戦が可能です。
造り上げてしまった神。それがアルファ碁。
アルファ碁について、「造り上げてしまった神」と表現をしていた
メディアもありました。
何がそんなに凄いのでしょうか?
そもそも将棋と比べて、碁は、盤面の局面が一京パターンあります。
一京ってたぶん単位自体は知ってても、どれぐらい多いのか
イメージできないですよね?
質問です。一京パターンはどれでしょう?
A10,000,000,000,000パターン
B100,000,000,000,000パターン
C1,000,000,000,000,000パターン
そうです。答えはCになります。
ここまで局面が多いと、コンピューターは高性能なマシンでも全ての
局面を網羅するのは不可能です。
囲碁の局面は将棋よりも遥かに多く、修羅場をくぐってきた棋士
たちの打ち出す手はコンピューターでも予測ができない事が多かったのです。
そのため、コンピューターが囲碁のトップレベルになれるのは、50年先の
未来と言われていました。ところがもう実現してしまいました。
「囲碁界の魔王」と言われているイ・セドル9段に勝利したのです。
囲碁界を震撼させたアルファ碁
これまでは長期戦になればなるほど、局面が複雑になり、
コンピューターにとって不利とされてきました。
それをアルファ碁は克服しています。
新手(今までの常識に無い手)がバンバン出てくる
囲碁界では、長年にわたる積み重ねで生まれた定石があります。
また、それを打ち破る新手と言われる独創的な手があります。
この独創性が勝ちにつながるため、独創性を苦手とするコンピューターが
囲碁では勝てなかったのです。
イ・セドル9段も、攻撃的かつ独創性の強い手を生み出して勝利を
積み重ねていったそうです。
そういえばマンガ、ヒカルの碁でも「神の一手」を追求してましたね。
アルファ碁はこの新手をバンバン打つ事ができます。
イ・セドル9段が負けた時、解説者が謝ったそうです。
「イ・セドル9段がなぜ負けたのか、説明できません。
アルファ碁の打った手が理解できないのです。」
だそうです。
これまで、特殊な状況化のみで効果を発揮すると言われて
いた手を、序盤で打ち込むのがアルファ碁です。
論理的な解釈ができない手を打っていくため、
打ったその手を説明する事ができず、何十手、何百手先になってその効果を
発揮するのです。
アルファ碁同士の対戦は神と神
最強のイ・セドル9段を倒し、引退する前のデモンストレーションとして
アルファ碁どうしの試合が行われました。
試合を観戦していた人たちは、騒然としたそうです。
アルファ碁の一手一手が何をしているのか、理解できないのです。
囲碁界の常識が完全に覆されました。
まさに「神の一手」の打ち合いのような状況なのです。
アルファ碁の技術
さて、このアルファ碁自体どういう技術で動いているのか?
ポイントは
①1,000,000,000,000,000パターンある局面の、重要度の高いパターンを選別する。
②選別したパターンの重要度を数値化し、正確に把握する。
(敵味方どちらも計算する事で、有利不利の概念を学ぶ)
③選別したパターンで効果的な手が打てるように機械が学習を繰り返す。
学習を繰り返すほど、局面の計算が正確になり、効果的な手が打てる
ようになるのです。
将棋の場合の数値化
将棋の場合だと、パターンはこんな感じです。
・飛車を持っている 重要度0.1
・王手をかけられている 重要度0.3
・歩が金に成る 重要度0.05
こうやって数値化する事で、初めてプログラム可能に
なるのです。
重要度を測る項目は増え続け、現在は5万項目あります。
人間が調整するのは、大変なので、そういう意味でも機械学習の
技術は重要です。
造り上げた神の足跡を辿るリバースエンジニアリング
そしてアルファ碁は引退しました。
その後囲碁界は、神の残していった一手一手を分析し始めました。
神の残していった真理と技術を自分のものにしようとしているのです。
IT業界では、リバースエンジニアリングといい、既に完成されているものを
分析し新製品などに役立てるというアプローチですね。
この点は非常に面白いとこだと思います。人間が自分で作ったコンピューターが
残した情報を人間が分析し、人間が高い次元に行く。
いつかは、人間が再度アルファ碁を上回る日がくるかもしれません。
それでは、また。